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【2-4】国保連レポート

東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会- 国民健康保険制度に関する要望書 -

    国民健康保険は制度創設以来、我が国の国民皆保険体制の中核を担い、地域住民の医療の確保と健康の維持増進に貢献してきた。
    しかしながら、中高年齢者が多く加入し医療費が増加する一方、被保険者の所得水準が低く、保険料(税)の負担率が高いという構造的な問題を抱えている。
   このような中、国保運営の在り方の見直しと財政支援の拡充による財政基盤強化を大きな柱とする、国保制度改革が実施されたが、今後も国は責任を持って最大限の努力をしていく必要がある。
   国保制度が公平でわかりやすく、かつ、安定的で持続可能なものとなるよう次のとおり国に要望する。

1 医療保険制度・国民健康保険制度の改革について

(1) 国は、国保財政基盤強化のため、毎年3,400億円の財政支援を今後も確実に実施すること。
また、保険料(税)に対する軽減措置・激変緩和措置・保険者努力支援制度の拡充等の継続的な財政基盤強化支援により国保制度が持続可能なものとなるよう責任を果たすこと。
(2) 国は、市町村の国保事務の軽減を図りつつ、標準化・広域化・効率化を推進するとともに、必要な財政措置を講じること。
(3) 市町村の保険料(税)算定には十分な議論や市民等への周知期間が必要であることから、国保事業費納付金の算定に必要な係数を早期に提示すること。
(4) 市町村事務処理標準システムについては、市町村等の保険者の意向等を聞きながら改善に努めるとともに、市町村等の保険者の事情を考慮して、性急な導入を推進しないこと。
また、国の責任において期限を設けることなく必要な財政措置を講じること。
(5) 今後も医療技術の進歩や高額薬剤の薬価基準収載に伴い高額医療費の増加が見込まれることから、特別な財政支援を講じること。
(6) 今後の医療保険制度改革の実施にあたっても、被保険者、医療機関、都道府県、市町村等に混乱が生じないよう、関係機関の意見を最大限に尊重し推し進めること。
(7) 子育て支援の観点から、子どもに係る保険料(税)均等割の軽減制度と、軽減分に係る国の財政支援制度を創設すること。

2 国民健康保険制度の改善について

(1) 地方単独福祉医療の実施に伴う国庫支出金減額措置の廃止について
    地方単独福祉医療制度の実施に伴う国保医療費への影響に係る療養給付費負担金及び普通調整交付金の減額措置を速やかに全廃すること。
    とりわけ、入院時食事療養費標準負担額については、当該負担額の地方単独福祉医療費助成を行っていない市町村に対する減額措置は即刻廃止すること。
(2) 特定健康診査・特定保健指導事業の円滑な実施について
特定健康診査等の充実を図るため、検査項目や基準単価等について、実態に即した見直しを行うとともに、地域の実態に合わせて追加している検査項目を国庫補助の対象とすること。
医療費適正化対策について、地域の実態を踏まえ適切に実施できるよう、事業所や医療機関と保険者との連携の促進や保健師等必要な人材確保のための財政措置をはじめ十分な支援策を講じること。
医療費適正化対策のための正確な分析が可能となるよう、レセプトへの主病等の記載方法を見直すこと。
(3) 国民健康保険及び被用者保険の被保険者資格の適用適正化について
被用者保険の適用事業所において、被保険者の資格取得が適正に行われるよう、国において事業所の指導を徹底すること。
被保険者資格の適用の適正化を徹底し、被用者保険から市町村国保への被保険者資格得喪情報の届出を法的に義務化すること。また、被保険者本人による適切な異動届出がなされるよう、国において事業所に対する指導を徹底すること。
国民健康保険被保険者資格喪失届の遅延による還付の還付加算金の起算日を納付日の翌日ではなく、届出日の翌日となるように制度を見直すこと。
(4) 療養費等支給業務の簡素化について
   高額療養費制度、高額医療・高額介護合算療養費制度、入院時食事・生活療養費制度は、年齢や所得による支給基準が複雑で、被保険者にわかりにくく、かつ、保険者には膨大な事務量の増加をもたらしているため、わかりやすく簡素な制度とすること。
(5) マイナンバー(個人番号)及びオンライン資格確認について
マイナンバー(個人番号)の利用範囲の拡大にあたっては、個人情報保護に十分配慮したうえで、被保険者の利便性の向上と保険者事務の合理化を実現すること。また、事務量の増加及びシステム改修などの費用負担については、国の責任において必要な財政措置を講じること。
マイナンバー(個人番号)記載の有効性が明確でないものは、制度を見直し、早期に対象事務から除外すること。
オンライン資格確認等システムの確実かつ円滑な構築のため、国の責任において財政支援をはじめ必要な措置を講じること。
(6) 医療費通知の取り扱いについて
    保険者が発行する医療費通知だけでは医療費控除にかかる税務申告には不十分であるという事実について、税務側からの丁寧な制度周知により、申告時の納税者の混乱を回避できるよう国税当局等との更なる調整を行うこと。
(7) 地域医療提供体制の確立について
    地域包括ケアシステムの構築を推進するため、国の責任において医師・看護師等の確保や地域偏在等を解消し、併せて介護人材の確保・育成を図るとともに、十分な財政措置を講じること。
(8) 予算編成の留意事項について
    国民健康保険の保険者等の予算編成にあたっての留意事項を早期に発出すること。
(9) 保険料(税)の軽減判定所得の算定について
    保険料(税)の軽減判定所得を算定するに当たり、個人住民税所得割の課税標準の算定に用いる、被保険者が申告した繰越純損失額をそのまま活用することができるよう所要の改正を行うこと。


令和元年7月5日
東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会

東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会- 要望書提出 -

 
   令和元年7月31日、金沢市保健局医療保険課 小嶋一彦課長と石川県国民健康保険団体連合会 大垣昌保常務理事は、東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会で採択された要望書を提出するため、厚生労働省、国民健康保険中央会を訪問した。

   厚生労働省では保険局国民健康保険課の熊木正人課長、また、国民健康保険中央会は原勝則理事長が対応された。小嶋課長は、安定的で持続可能な国保制度の運営を目指した東海北陸6県の取り組みや諸課題に合わせ金沢市が抱える実情を織り交ぜながら、要望書事項の趣旨説明を行い手交した。

   要望書を受け取った厚労省の熊木課長は「お話いただいたことについて、しっかりと検討をしていきたい。」と述べ、国保中央会の原理事長からは「我々も関係団体として保険者と協力していきたい。11月の国保制度改善強化全国大会の決議文を今回の要望書を踏まえて作成していきたい。」と支持する考えを示した。

   また根本匠厚生労働大臣、厚生労働省保険局 濵谷浩樹局長、国民健康保険中央会 岡﨑誠也会長に宛てた要望書もそれぞれ提出を行い、訪問は終了した。

 
写真(右厚生労働省保険局国民健康保険課長 熊木 正人 氏 厚生労働省
(右)保険局国民健康保険課 熊木正人課長
(左)金沢市保健局医療保険課 小嶋一彦課長

   
写真(左)国民健康保険中央会理事長 原 勝則 氏 国民健康保険中央会
(左)原勝則理事長
(右)金沢市保健局医療保険課 小嶋一彦課長
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