■講師 厚生労働省障害保健福祉部 企画課 野村 知司課長
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=国保改革の背景=
(1) |
医療費の伸び率の要因分解
・人口及び報酬改定の影響を除いた医療費の伸びは近年1~2%程度であった。
平成27、28年度は一時的な要因により変動が大きいが平均すると1.5%程度で、そ
れ以前の水準と大きく変わらない。その要因には、医療の高度化、患者負担の見直し
等種々の影響が含まれる。
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(2) |
市町村国保が抱える構造的な課題と社会保障制度改革プログラム法における対応の方向性
○課題
・年齢構成が高く、医療費水準が高い
・所得水準が低い
・保険料負担が重い
・保険料(税)の収納率低下
・一般会計繰入、繰上充用
・財政運営が不安定になるリスクの高い小規模保険者の存在
・市町村間の格差
○対応の方向性
・国保に対する財政支援の拡充
・国保の運営について、財政支援の拡充等により、国保の財政上の構造的な問題を解決する
・財政運営を始めとして都道府県が担うことを基本
・都道府県と市町村との適切な役割分担について検討
・低所得者に対する保険料軽減措置の拡充
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=国保制度改革=
(1) |
国保制度改革の概要
・都道府県が、該当都道府県内の市町村とともに国保の運営を担う
・都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保等の国保運営に中心的な役割を担
い、制度を安定化
・都道府県が、都道府県内の統一的な運営方針としての国保運営方針を示し、市町村が担う事務の効率化、標準化、広域化
を推進 |
(2) |
都道府県国保運営方針の策定
・改革後は、都道府県と市町村が一体となって、財政運営、資格管理、保険給付、保険料の賦課徴収、保健事業その他の保険
者の事務を共通の認識の下で実施するとともに、各市町が国保事業の広域化や効率化を推進できるよう、都道府県が、国保
法第82条の2に基づき、県内の統一的な国民健康保険の運営方針を定める。
・市町村は、国保法第82条の2に基づき、都道府県国保運営方針を踏まえた国民健康保険の事務の実施に努める
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(3) |
国保改革による財政支援の拡充
・国保の財政運営を都道府県単位化する国保改革とあわせ、毎年約3,400億円の財政支援の拡充を行う
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=財政の仕組み=
(1) |
改革後の国保財政の仕組み
・都道府県が財政運営の責任主体となり、市町村ごとの国保事業費納付金の額の決定や、保険給付に必要な費用を、全額、市
町村に対して支払うことにより、国保財政の「入り」と「出」を管理する
・市町村は、都道府県が市町村ごとに決定した納付金に見合った保険料を設定、徴収して都道府県に納付する。
・予期せず発生した収支差に対しては、都道府県に設置した財政安定化基金を活用(毎年の収支が均衡できるキャッシュフロー
を確保し、保険財政の健全化を図る) |
(2) |
給付金の市町村への配分
・都道府県が、都道府県内の保険料収納必要額を市町村ごとの「被保険者数」と「所得水準」で按分し、それぞれに「医療費水
準」を反映することにより、市町村ごとの国保事業費納付金の額を決定 |
(3) |
4段階の激変緩和措置(令和2年度)
・納付金の算定にあたって、各都道府県は市町村ごとの医療費水準や所得水準の差を、納付金にどの程度反映させるかを定め
ることになるが、激変が生じにくい反映方法を用いることを可能とする
・都道府県繰入金(給付費の9%相当)の活用により、市町村ごとの状況に応じたきめ細やかな激変緩和措置を講じることが可能
な仕組みを設ける
・施行当初の激変緩和の財源を確保するため、各都道府県ごとの「特例基金」を国費により設け、これを計画的に活用することが
可能な仕組みを設ける(平成30年度~令和5年度の時限措置。基金の規模は全国で300億円)
・施行当初の激変緩和財源の充実に関する地方団体からの要請を踏まえ、平成30年度から投入する1,700億円のうちの300億円
を追加激変緩和財源として確保し、都道府県ごとの柔軟な活用を可能とする。(施行当初の暫定措置。令和元年度は全国で
200億円)。さらに、令和元年度は、特別調整交付金による追加激変緩和措置として一定額を継続 |
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