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【2-4】国保連レポート

東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会* 国民健康保険制度に関する要望書 *

    国民健康保険は制度創設以来、国民皆保険体制の中核を担い、地域住民の医療の確保と健康の維持増進に大きく貢献している。
    しかし、被用者保険と比べ、少子・高齢化の急速な進展や就業構造の変化により保険料(税)の負担能力が低い一方で、加入者の年齢が高いために医療費が多くかかるという構造的な課題を抱えている。
    その解決のため、平成27年5月に成立した「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律《により、平成30年4月から国民健康保険の財政運営の都道府県化がいよいよスタートした。新たな国保制度が公平でわかりやすく、かつ、安定的で持続可能なものとなるよう次のとおり国に要望する。

1 医療保険制度・国民健康保険制度の改革について

(1) 国保の財政対策として、国は、財政運営の都道府県化後も保険者の財政状況と医療費の伸びを注視し、制度運営についての上断の検証を行うとともに、平成31年度以降も確実、かつ、保険料(税)に対する激変緩和措置を含めた継続的な財政基盤強化支援により国保制度が持続可能なものとなるよう責任を果たすこと。
(2) 市町村の保険料(税)算定に向けた十分な議論や、保険料(税)率決定後には、市民等への十分な周知期間が必要であることから、国保事業費紊付金の算定に必要な係数を早期に提示すること。
(3) 市町村事務処理標準システムについては、市町村等の保険者が利用しやすいものとなるよう、引き続き、市町村の意向等を聞きながら改善するとともに、今後導入を予定している市町村に対して十分な支援を行うこと。
また、システムの導入においては、市町村の事情を考慮して性急に推進することなく、医療保険制度改革に伴う都道府県と市町村の事務負担及びシステム更新などの費用負担については、引き続き国の責任において必要な財政措置を講じること。
(4) 高額なレセプト等の発生により、国保保険者に予期し得ない医療費の増加が生じていることや、今後も医療技術の進歩に伴い高額医療費の増加が見込まれることから、特別な財政支援を講じること。
(5) 今後の医療保険制度改革の実施にあたっても、被保険者、医療機関、都道府県、市町村等に混乱が生じないよう、関係機関の意見を最大限に尊重し推し進めること。
(6) 子育て支援の観点から、子どもに係る保険料(税)均等割の軽減制度と、軽減分に係る国の財政支援制度を創設すること。

2 国民健康保険制度の改善について

(1) 地方単独福祉医療の実施に伴う国庫支出金減額措置の廃止について
    地方単独福祉医療は、子ども・重度心身障がい者等の健康確保と福祉の向上や少子化対策に大きな役割を担っていることから、当該制度の実施に伴う国保医療費への影響に係る療養給付費負担金及び普通調整交付金の減額措置を全廃すること。
    とりわけ、入院時食事療養費標準負担額については、当該負担額の地方単独福祉医療費助成を行っていない市町村に対する減額措置は即刻廃止すること。
(2) 特定健康診査・特定保健指導事業の円滑な実施について
特定健康診査等の充実を図るため、検査項目や基準単価等について、実態に即した見直しを行うとともに、より効果的な健康づくり事業について支援策を講じること。
保険者努力支援制度の創設で各保険者による医療費適正化対策の取り組み結果に基づいた財政支援がなされることとなったが、国においても医療費適正化対策としての特定健康診査・特定保健指導事業について、政府広報等を通じた積極的な周知活動を行うとともに、更なる充実を図るため、医師会等への協力要請や国の責任において保健師等必要な人材が確保できるよう適切な支援策及び十分な財源措置を講じること。
医療費適正化対策のための正確な分析が可能となるよう、レセプトへの主病等の記載方法を見直すこと。
(3) 国民健康保険及び被用者保険の被保険者資格の適用適正化について
被用者保険の適用事業所において、被保険者の資格取得が適正に行われるよう、国において事業所の指導を徹底すること。
被保険者資格の遡及適用の未然防止及び被用者保険との二重加入の防止等の適用の適正化を徹底し、保険料(税)の遡及賦課による滞紊を未然に防止するため、被用者保険から市町村国保への被保険者資格得喪情報の届出を法的に義務化すること。また、法整備するまでの間、被保険者本人による適切な異動届出がなされるよう、国において事業所に対する指導を徹底すること。
被保険者資格の適用適正化に伴って、国民健康保険被保険者資格喪失届の遅延による還付の還付加算金の起算日を紊付日の翌日ではなく、届出日の翌日となるように制度を見直すこと。
(4) 療養費等支給業務の簡素化について
   高額療養費制度、高額医療・高額介護合算療養費制度、入院時食事療養費制度・入院時生活療養費制度は、年齢や所得による支給基準が複雑で、被保険者にとってわかりにくい。また、保険者には膨大な事務量の増加をもたらしているため、わかりやすく簡素な制度とすること。
(5) マイナンバー(個人番号)について
マイナンバー(個人番号)の利用範囲の拡大における検討にあたっては、個人情報保護に十分配慮したうえで、被保険者資格の適用適正化の推進など、被保険者の利便性の向上と保険者事務の合理化を実現すること。また、事務量の増加及びシステム更新などの費用負担については、国の責任において必要な財政措置を講じること。
マイナンバー(個人番号)記載の有効性が明確でないものは、制度を見直し、早期に対象事務から除外すること。
(6) 医療費通知の取り扱いについて
    平成29年度の税制改正において、所得税確定申告における医療費控除にかかる税務申告書類の作成の一部が、保険者が発行する医療費通知を添付することで簡略化できることとなった。しかしながら税務申告を念頭に置いた場合、保険者が発行する医療費通知だけでは税務申告には上十分であるという事実について、税務側からの制度周知と保険者側からの制度周知には相当の温度差が見られる。このため、税務側からの丁寧な制度周知によって申告時の紊税者の混乱を回避できるよう国税当局等との更なる調整を求めるとともに、税務申告の項目に対応するための帳票変更や電算システム改修といった、医療費通知の元来の趣旨から外れた用途に保険者が対応するための費用については、国の責任において必要な財政措置を講じること。
(7) 地域医療提供体制の確立について
    質の高い地域医療提供体制及び地域包括ケアシステムを構築するため、国の責任において医師・看護師等の確保策を講じて地域偏在等を解消するとともに、十分な財政措置を講じること。
(8) 予算編成の留意事項について
    国民健康保険の保険者等の予算編成にあたっての留意事項を早期に発出すること。
(9) 保険料(税)の軽減判定所得の算定について
    保険料(税)の軽減判定所得を算定するに当たり、個人住民税所得割の課税標準の算定に用いる、被保険者が申告した繰越純搊失額をそのまま活用することができるよう所要の改正を行うこと。
以上

平成30年7月6日
東海北陸地方都市国保主管課長研究協議会
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